フランケン地方とワイン

Region Franken und ihre Weine

 ドイツワインは甘口が主流と思われがちですが、キリっとした辛口の白ワインを好んで飲むドイツ人は多く、中でもフランケンワインは変化に富んだその個性的なテロワールから生まれる辛口の白で人気があります。
 文豪ゲーテは、「ヴュルツブルガー(ヴュルツブルク産ワイン)を送ってくれ。他のワインを飲むと不機嫌になる」 と妻宛の手紙に記した程、フランケンワインを好んでいました。
 1980年頃には3500ヘクタールだった耕地を今では6500ヘクタールにまで広げたフランケン地方は、ワインの生産量を年々増やしている将来有望なワイン産地です。

フランケン地方のテロワール

 フランケン地方はドイツのほぼ中央、フランクフルトの東、ニュルンベルクの北西に位置し、ハスフルト (Haßfurt) とアシャッフェンブルク (Aschaffenburg) の間を蛇行するマイン川とその支流の渓谷に広がる南向き斜面でブドウを栽培しています。斜面の多くは傾斜がきつく、中には60%という急勾配にも農園が作られています。
 夏と冬の気温差が著しい乾燥した大陸性気候で、年間平均気温10℃以下という植生期間の短い寒冷な地域です。また春と秋の天候は予測が難しく、運が悪ければ収穫量に損害が出てしまうこともあります。しかし大陸性気候がもたらす暑く乾いた夏のおかげで、ドイツの他の地域にはない辛口でコクのある素晴らしいワインの生産が可能となるのです。

 フランケン地方の土壌は、およそ2億5000万年から2億年前にかけて最初の哺乳類が現れた中生代初期、三畳紀 (トリアス紀) に由来しており、砂岩、石灰岩、コイパー(泥炭岩)などの変化に富んだ土壌がフランケンワインに大きな特徴を与えています。(上図参照)

 マイン川に沿って形作られた三つに分けられるワイン生産地区は、それぞれ次のような特徴を持っています。

■ マイン・フィアエック (Mainviereck マイン四角地帯) :
主な土壌:彩色砂岩
最も西に位置し、西南東の三辺をマイン川に囲まれた地帯。
北西部に位置する片麻岩の土壌では、ほぼリースリングのみが栽培されています。

マイン・ドライエック (Maindreieck マイン三角地帯) :
主な土壌:貝殻石灰岩
フランケン地方の中央に位置し、南西と南東の二辺をマイン川が囲む地帯。フランケンワイン全生産量の70%以上がヴュルツブルクを中心にしたこの地域で生産されています。
フランケン地方のワイン畑としてはヴュルツブルク周辺のヴュルツブルガー・シュタイン (Würzburger Stein) が最も有名ですが、ヘルマン・ベンダーはフォルカッハ (Volkach) 周辺のマイン川が蛇行する地域マインシュライフェ (Mainschleife) や、ヴュルツブルクの南に位置するゾンマーハウゼン (Sommerhausen) に特に注目しています。

シュタイガーヴァルト (Steigerwald) :
主な土壌:コイパー(泥炭岩)
もっとも東に位置する生産地区。土壌の作り出すミネラル感が特徴です。大陸性気候が最も著しい地域でもあります。
この地域でヘルマン・ベンダーが特に注目するワイン畑は、ヴィーベルスベルガー・ダッハス (Wiebelsberger Dachs) です。


 同じブドウ品種でも、土壌の多彩性と川のうねりや傾斜などの立地条件が生み出すミクロ気象により、変化に富んだワインができるということ、それがフランケンワインの特徴であり、面白さなのです。

ブドウ品種

フランケンワインと言えば、な んと言ってもシルヴァーナー (Silvaner) が有名ですが、マイルドなワインが流行した70年代頃からその栽培量が減り、現在ではミュラー・トゥルガウ (Müller-Thurgau) がフランケン地方で最も多く栽培されています。しかし変化に富んだフランケンの土壌の持ち味を体現できる辛口のシルヴァーナーを再びフランケン第一の品種に復活させようという動きがワイン生産者の中で起きています。

その他フランケン地方で栽培されている主な品種には、白ではバッフス (Bacchus)、ショイレーベ (Scheurebe)、ケルナー (Kerner) 、リースリング (Riesling) などが、赤ではドミナ (Domina)、シュペートブルグンダー (Spätburgunder)、ポルトギーザー (Portugieser) などが挙げられます。

ドイツのブドウ品種で最も有名なリースリングは他の地域に比べ少量しか栽培されていません。それはリースリングが晩熟の品種であり、夏が短いフランケン地方では育てにくいことが原因です。

また、フランケン地方の気候条件下で赤ワインのブドウ品種を育てるのは困難とされていますが、ドイツで最も温暖なフライブルク周辺のライン渓谷を通りオーデンヴァルト山地を抜けてフランケン地方に流れ込む西南の温かい風オーデンヴァルト・フェーンにヘルマン・ベンダーは着目、現在では栽培されなくなってしまったフランケン地方の古い品種ブラウフレンキッシュ (Blaufränkisch) を復活させる夢を持っています。なめらかでミネラル感に溢れ、軽やかなタンニンの味が特徴のブラウフレンキッシュを、ヘルマン・ベンダーがグラスに注いでくれる日が来るのが楽しみです。

ボックスボイテル

丸い形をした瓶ボックスボイテル (Bocksbeutel) は、少数の例外を除き、フランケンワインにのみ使用が許されているフランケンワインのトレードマークです。
ボックスボイテルの原形は、アシャッフェンブルクに近い町ヴェーニヒウムシュタット (Wenigumstadt) で発掘された紀元前1400年のケルト文明の土器まで遡ります。平たい円形の瓶は円柱形の瓶よりも持ち運びに便利なため、人々は古くから畑仕事や狩りなど、野外での仕事や旅に携帯する水筒として使っていました。ローマ人によって陶製やガラス製などに改良され、現在のボックスボイテルの形に至りました。
18 世紀前半、市場に出回った粗悪な 「偽フランケンワイン」 がフランケンワインの評判を落とすことを防ぐため、ヴュルツブルクの伝統あるワイン醸造所ビュルガーシュピタール (Bürgerspital) で生産されたワインをボックスボイテルに入れ封印して販売したことから始まり、後にフランケンワインのシンボルとなったのです。
現在ではボルドー型またはブルゴーニュ型の縦長ボトルに詰められたフランケンワインも多くありますが、品質に違いがあるわけではありません。

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